2013年9月10日火曜日
イソギンチャク的研究状態
こんにちは、池鯉鮒です。
今回は「イソギンチャク的研究状態」です。
イソギンチャクの研究ではありません。
さて、世界でも日本でも、研究に関わっている”研究者”と呼ばれる人はたくさんいます。
大学の教授や、国の研究機関の研究員、企業の研究開発部門の研究員などです。
それで、それぞれの研究者にはそれぞれ専門の研究分野があります。
例えば私は工学部に所属しており、建築設備工学・建築環境工学が専門ということになります。
理系で考えると、工学部では、機械、電気、建築、土木など、他に農学部では農業、生物、環境資源、生態、獣医など、理学部では、数学、物理学、化学、生物、地学など多岐に渡っています。
そして各専門分野は細分化され、それぞれに深く掘り下げられています。
ただ問題もあります。それぞれの分野が連携していないことです。
それぞれの分野は深く掘り下げられていて、その分野においては非常に知識や経験が豊富です。
がしかし、多くの場合は専門以外の分野についてはほとんど知らない(一般大衆的)と言っても過言ではありません。専門バカなどという言い方で言われますが、その表現はある意味”的を得て”います。
そのため、いろいろな分野にまたがって研究を進める際には、横断プロジェクトとして、いろいろな分野の研究者が集まって研究を進めるプロジェクトが発生しますが、新しい成果を生み出すのは至難の技ではありません。
異分野の研究者が集まった場合、全体を束ねる(オーケストラの指揮者のような)リーダーが必要ですが、そのリーダーが難しいわけです。
オーケストラを考えるとわかりやすいですが、オーケストラの指揮者は各楽器ひとつひとつの音を聞き分けられます。ひとつの楽器でも間違った音を出すと、それがわかります。ひとつひとつを聞いて、全体をまとめているわけです。7人の言うことを同時に聞き分けられたという聖徳太子以上ですね。
それでプロジェクトのリーダーには、中心となる研究者がなりますが、その研究者は異分野の研究内容に対して全てを理解しているというわけではありません。オーケストラの指揮者のようにプロジェクトに関わる全ての分野に精通しているリーダーが理想ですが、そういう人はなかなかいません。
ですから、リーダーは自分の専門分野の研究者に対しては研究の中身について助言・アドバイスはできますが、異分野の研究に対しては中身にはタッチできないのです。
そうすると、オーケストラの指揮者のようには全体をまとめるのが難しくなってしまいます。本来、「異分野と異分野の接触」が新しい発想や概念を生み出す原動力となるのですが、なかなかうまくいっていないのが現状です。
それではどうすればよいのでしょう。
それは、指揮者を介して異分野同士をつなぐ方法ではなく、それぞれの研究者がいろいろな異分野へ触手を伸ばしていくほうが簡単だと思っています。
異分野と言っても、まったくの異分野は難しいかもしれませんが、自分の専門分野と異分野との境界領域あたりには、研究の触手を伸ばせるのではないかと思います。その異分野も一つではなく複数の異分野に対してです。
その際、軸足は元々の専門分野においておきます。軸足がないと“根無し草”になってしまいます。軸足となる元の専門分野は深く掘り下げ、複数の触手は異分野を浅く掘り下げるといったイメージです。
軸足の専門分野は、岩に固着するイソギンチャクの体壁・足盤に当たります。いろいろな異分野を浅く扱っているのが、イソギンチャクの触手に相当しています。基本は軸足の専門分野の研究で深く掘り下げ、しかし複数の異分野の研究もやっている状態です。これが「イソギンチャク的研究」の状態です。
多くの研究者がこのようなスタイルで研究を進めるとどうなるでしょうか。
イメージで言えば、ある分野の研究テーマにいろんなイソギンチャクから多くの触手が伸びてきて、複雑に絡み合っている状態ですね。触手と触手が絡み合って、全体を網羅しているような状態です。
外から見たら、あの人(研究者)は専門分野は何だったっけ?というくらいに、いろいろやっている状態です。
異分野と異分野の接触が、いろいろなところで発生している状態ともいえます。
世の中の研究者の多くがこの「イソギンチャク的研究」状態になったときには、おそらく技術的な諸問題の多くが解決できるようになっているのだと思います。
大きなイノベーションがいくつも起きて来ているのではないかと思います。
21世紀の後半にはそうなっていることを期待したいですね。
それではまた。
久留米工業大学
建築・設備工学科
池鯉鮒
【PR:キーワード構築法ーらくらく文章作成術ー】
自己紹介や報告書などの文章が書けない。文章が膨らまない。
筆が進まないという人に、とっておきの文章作成法です。
学校では教えてくれない文章作成術
「キーワード構築法ーらくらく文章作成術ー」は
こちらをクリック↓
http://chirifulab.web.fc2.com/keywordLP.pdf
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿