今回は理系離れについて考えてみます。
理系離れ、工学系離れということが言われて久しいですが、ここでひとつの極端なネガティブシミュレーションをしてみましょう。
どんどん理系離れが進んで理系の人がいなくなってしまったと考えてみます。まあ、実際にはこれほど極端な状況はあり得ないと思いますので、ほとんどありえない仮定の上での話です。わかりやすいのでそのように仮定してみます。するとどうなるでしょうか。
例えばテレビの映りが悪くなったので直してもらおうと思っても、誰も対応できません。自動車の調子がおかしいとしても、誰も調整できません。家が停電しても誰もわかりません。そもそもそれ以前に、テレビや自動車などといったような工業製品を生産することができません。工場は完全自動化ではありませんから、人が操作したり管理したりする必要があります。将来的に工場が完全自動化されれば人が関わる場面は減りますが、それでも維持管理する少数の人(技術者)は必要です。
理系の人が全くいないというここまで極端な状況にはなりませんが、現実はこのような傾向になってきているということを意味しています。理系の人が減るということは、科学者や技術者の数が減ります。全体の数が減ってしまいます。そうすると新しい技術も生まれにくくなります。母数が大きいからこそ、すばらしい人材や技術も生まれます。
1人で考えた場合と3人で考えた場合では、どちらがよい考えが浮かぶでしょう。多くの場合は、3人で考えたほうがよい考えが浮かびます。「三人寄れば文殊の知恵」と言いますが、多くの人が関わったほうがいろいろなアイデアが出るということです。
企業の商品開発に関連する話ですが、よく「千三つ」という言い方をします。1000件のアイデアがあった場合、実際にモノになるのは3件だという意味です。500件のアイデアで3件モノにしようとしてもそれは難しいわけです。
さてここで、実際の近未来の話になります。近い将来必ず生じるのは、エネルギーの枯渇です。その多くを化石燃料に頼っている現在の文明では、石油や石炭、天然ガス、原子力などの有限な化石燃料を消費することで、熱エネルギーや電気エネルギーに換えて使っています。近年話題のシェールガスやメタンハイドレートなども、地下に眠る有限な化石燃料です。現在の文明はこのような有限な化石燃料を消費することで発展してきました。2011年3月11日の東日本大震災以降、原子力に対する方向性が見直されて自然エネルギー利用へ向かっていますが、やはり自然エネルギーではまかない切れないという意見も多く、原子力も再浮上して来つつあります。
有限な化石燃料ですから、使っていけば必ず枯渇します。世界がそのようなエネルギー枯渇時代に入っていったときにどのようなことが起きるのでしょうか。
それは1990年8月に起きた第1次湾岸戦争に見られるように、答えは明らかです。人間は自分が生きるか死ぬかといった枯渇状態に陥った場合、他人のものを奪うようになってしまいます。湾岸戦争では、イラクが隣国であるクウェートの石油資源を狙って侵攻しました。今の日本では考えにくいですが、実際にはこのようなことが起こっています。
管子にある「衣食足りて礼節を知る」は的確に人間を表しています。現代風に置き換えれば、「エネルギーと食料(食料には水も含みます)が足りてこそ礼節を知ることができる」と言えます。エネルギーや食料が足りない状況になると、礼節などと言っている場合ではなくなってしまいます。人と人なら小規模な奪い合いで済みますが、国と国でそのような状況になると、イラク侵攻のような「戦争」に発展してしまうということです。
ここでまた、理系離れの話に戻ります。今までの話はネガティブシミュレーションの結果ですが、エネルギー危機や食料危機に陥ったときに十分に予想される結果です。そのようなエネルギー危機、食料危機に陥らないようにするためには、大きな技術革新が必要です。新しい技術が必要になります。そして新しい技術を生み出すには、その技術分野に多くの人材が関わっていなければいけません。「三人寄れば文殊の知恵」や「千三つ」の例えにあるように、母数が大きくなければ突出した人材も突出したアイデアも生まれてきません。
また、資源のほとんどない日本は、技術力で世界に対してアピールしていかなければなりません。いわゆる「技術立国」です。“技術”しかも“他にはない技術”があってこそ、世界での日本の立場をはっきりさせて、世界に影響を及ぼすことも可能になるのだと思います。
ですから現在学生のみなさんは、自分が大人になったときに前に書きましたネガティブシミュレーションの結果のような世界で暮らしていきたいかどうかを考えてみてください。また自分の子供や孫にそのような世界で暮らしてほしいと考えますか?それは望まないはずです。
ここでやっと結論です。私は多くの人に理系に進んでほしいと考えています。現在学生で文系に進もうか理系に進もうか迷っている人やまだ決めていない人は、ぜひ理系に進んでください。理系に進むことを決めている人は、自信を持ってその道を進んでください。理系の人材が増えないと、将来危ないと私は危惧しています。
いきなり、長文の重たいブログになってしまいました。ここまで読んでいただいてありがとうございます。今回はこれで終わります。次回からは、もうちょっと軽めにしたいと思います。
久留米工業大学
建築・設備工学科
池鯉鮒
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